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エンタメが「観るもの」から「体験するもの」へ――新時代の幕開け
かつてエンタメといえば、映画館でスクリーンを観る、テレビで番組を楽しむといった「受け身の体験」が主流でした。しかし令和の時代、エンターテインメントの概念は大きく変わりつつあります。人々は今、“観る側”ではなく“参加する側”としてエンタメを楽しむようになっているのです。
その背景には、テクノロジーの進化とSNSの発展があります。AR（拡張現実）やVR（仮想現実）といった新技術が、作品の世界に入り込むような没入体験を可能にし、同時にSNSがファン同士のつながりを強めました。こうした要素が融合し、エンタメは「体験型」へと進化を遂げています。
この記事では、令和のエンタメを象徴する“没入型エンタメ”の魅力と、そこに関わる人々の新しい楽しみ方を詳しく見ていきます。
テクノロジーが生んだ“体験型エンタメ”の時代
今、世界中で話題を集めているのが「イマーシブ（没入型）エンタメ」です。これは観客がただ作品を鑑賞するのではなく、まるで物語の一部になったように体験できるエンターテインメントのこと。映画館、テーマパーク、イベントスペース、メタバース空間など、さまざまな場所で展開されています。
代表的な例として、ARを使ったアート展や体験型舞台が挙げられます。観客はスマートフォンや専用ゴーグルを通して、目の前に登場するキャラクターや映像と“共に過ごす”ような感覚を味わうことができます。五感で楽しめるリアルな演出は、従来のエンタメでは味わえない没入感を生み出しています。
また、メタバースの登場によって、現実世界を超えた「仮想空間でのエンタメ体験」も広がっています。ライブや映画の舞台挨拶、ファンイベントがバーチャル空間で開催され、世界中どこからでも参加できるようになりました。距離や時間の制約を超えた新しいエンタメが、人々をつなげているのです。
バーチャルライブの熱狂――アーティストとファンの新しい関係
音楽業界でも、デジタル技術による革新が進んでいます。特に注目されているのが「バーチャルライブ」です。3Dアバターやホログラムを使ったライブイベントでは、アーティストが実際にステージに立たなくても、リアルと変わらない臨場感を味わうことができます。
この新しい形のライブは、単に映像を流すだけではなく、ファンがアバターで会場に参加できるのが特徴です。ファン同士でリアクションを送り合い、ペンライトを振り、コメントを投稿する――そんな体験がオンライン空間で実現しているのです。
VTuberやバーチャルシンガーといった存在も、この分野を牽引しています。ファンとリアルタイムで交流しながら、歌やトークを届けるスタイルは、物理的な距離を超えた「新しい一体感」を生み出しました。ファンが直接応援メッセージを送り、アーティストがそれに応える。この双方向のコミュニケーションこそ、令和エンタメの最大の特徴です。
“推し活”の進化――ファンがエンタメを育てる時代
今や「推し活」は、エンタメ文化を語るうえで欠かせないキーワードです。推し活とは、自分の“推し”（＝好きなアーティストやキャラクター、作品）を応援する活動のこと。ファンはSNSで情報を共有したり、イベントに参加したり、グッズを収集したりと、さまざまな形で推しを支えています。
かつては作品を受け取るだけだったファンが、今では“広める側”になりました。SNSでの投稿やハッシュタグによる拡散、ファンアートの制作など、ファン一人ひとりの行動がエンタメの発展に直結しています。結果として、推し活はコンテンツの寿命を延ばし、ファン同士のコミュニティを形成する重要な要素となりました。
さらに、公式がファン活動を取り入れる流れも増えています。ファンアートコンテストや、SNS投稿を取り上げる公式キャンペーンなど、ファンと一緒に作品を作り上げる試みが活発です。まさに、ファンがエンタメを“育てる時代”が訪れたと言えるでしょう。
映画・アニメも「体験型」へ――参加するストーリーが人気
映画やアニメの世界でも、“体験型”の仕掛けが増えています。たとえば、映画館でスマホと連動して物語に参加できる「インタラクティブ映画」や、視聴者の選択によって結末が変わる作品が話題を呼んでいます。
アニメでは、放送後にファンがSNSで考察を共有し、それをきっかけに次回の展開が注目される「参加型視聴文化」が定着しました。視聴者が作品世界に深く関わることで、ただの消費ではない“共創”の関係が築かれているのです。
また、アニメの聖地巡礼も体験型エンタメの一つです。作品の舞台となった地域を実際に訪れ、現地の風景と物語を重ね合わせる――そんな体験がファンの心を掴んでいます。エンタメはスクリーンの中だけではなく、現実の街や日常生活にも広がりを見せています。
ショート動画文化が作る“共感エンタメ”
ショート動画の台頭も、現代のエンタメを大きく変えました。TikTokやYouTubeショートのように、数十秒で感動や笑いを伝えるコンテンツが世界中で人気です。特に若い世代では、「テレビよりもSNSでエンタメを楽しむ」傾向が強まっています。
ショート動画の特徴は、視聴者が「共感」しやすい点です。日常の一コマ、思わず笑ってしまう瞬間、心が温まる出来事――短い時間でも人の感情を揺さぶる力を持っています。そして視聴者が「自分もやってみたい」と感じた瞬間、動画の再現やリミックスが拡散し、新しいトレンドが生まれます。
このように、共感を軸にした“連鎖型エンタメ”が、現代のSNS時代を象徴しているのです。
AIとエンタメ――創作の可能性が広がる
AI（人工知能）の発展も、エンタメ業界に大きな影響を与えています。AIは楽曲制作、映像編集、キャラクターデザインなど、さまざまな分野で活用されています。クリエイターがAIをサポートツールとして活用することで、これまでにないスピードと表現力で作品を生み出せるようになりました。
また、AIがファンの好みを分析し、個人に最適なコンテンツをレコメンドする仕組みも進化しています。これにより、視聴者は自分の好みにぴったり合ったエンタメに出会いやすくなりました。AIによって、クリエイターとファンの距離がさらに縮まっているのです。
とはいえ、AIが人間の感性を完全に代替するわけではありません。むしろ、AIの力を借りて人間の創造性を引き出す――そんな新しい形の“共創”が、今後のエンタメを支える鍵になるでしょう。
まとめ：エンタメの未来は“共感”と“参加”の融合
令和のエンタメは、「体験」「参加」「共感」という3つのキーワードで進化を続けています。テクノロジーによってファンは作品の中に入り込み、SNSで意見を交わし、クリエイターと共に物語を作る時代になりました。
今後は、メタバースやAIを中心としたデジタル技術がさらに進化し、エンタメはより身近で多様なものになっていくでしょう。ファンはただの視聴者ではなく、作品を動かす「共演者」でもあります。
あなたの「好き」が誰かを動かし、世界を変える。エンタメの未来は、まさに“共感でつながる”時代の象徴なのです。
